作曲家として独り立ちしていく上で、私の「軸」となったのが、和声学の権威で、国立音楽大学作曲学科(東京)の島岡譲教授(87)(現在は名誉教授)の指導でした。
私は3歳から音楽教室で学び、小学生になると作曲も始めていました。自己流だったので、クラシック音楽の理論を学ぶべきだと思い、国立音大に進学しました。
先生は当時50歳代。ふだんは温和な方でしたが、指導となると、厳しく、熱心でした。提出した課題曲を添削し、書き直しを求める。次の授業でまた書き直し、追加の課題も出す。毎日、深夜まで勉強しないと間に合わず、通常の授業では足りなくなりました。そうしたら先生は、早朝や夜に補習をしてくださったのです。
先生は「理論を知らないのと、知っていて使わないのとでは、大きな違いがあります」と、繰り返しおっしゃっていた。先生が学生の作品を手直ししてピアノで弾くと、ため息がでるほど美しい音楽になる。自己流との大きな隔たりに、基礎の大切さを痛感しました。
先生は理論一辺倒でもなくて「音楽は聴いて良ければよいのだ」ともおっしゃっていた。音楽理論からちょっと外した曲をつくって出すと先生は「理論からは外れているが、僕は好きだ」と言って、譜面に合格のサインとして丸で囲んだ「島」を書いてくれました。
音楽理論を身に着けると、そこから外れた面白さがわかるようになりました。中心の軸がしっかりあるから、安心して挑戦できる。自分の軸をしっかりつくることの大切さを、先生は教えてくれました。
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